卒業


彼女は最後まで笑っていた。

間違いなく辛いはずなのに、笑って卒業しようとしている飯田さんの笑顔を目にして、

かけがえのない存在が離れていく瞬間。めでたいのだ。僕は涙に立って居られなかった。


電車の中で、「春の歌」を聴いた。

綺麗なメロディと彼女の声が僕を包んだ。

この曲を彼女達が歌う場所で、どうしても聴いてみたかった。



このまま、僕も、消えてしまいたい。少しだけそう思った。

「彼女はモーニング娘。じゃない」、「モーニング娘。に居ない」と思う事が、こんなに辛く苦しいものだったなんて、今まで思わなかった。


彼女が卒業する実感なんて無かった。

明日になれば、またこうして、モーニング娘。としてテレビや雑誌で笑う姿に、僕はまた励まされポジティブな力をくれると、そう思っていた。

そんな毎日に慣れすぎていた。頼りすぎていた。でも、それが今までの僕だった。

昨日、家に帰ってきてから彼女に会いたくて仕方が無い。

帰りの人ごみで、彼女を探している。

こんなところに、彼女が居るはずが無いと知っている。